無痛分娩のメリットとデメリット




陣痛の痛みを軽減したいという妊婦さんの増加に伴い、無痛分娩が急速に普及してきています。
米国では90%以上の妊婦さんに無痛分娩が行われており、日本でも今後ますます無痛分娩は増加すると思われます。

無痛分娩とは言葉の通り、出産時の痛みを麻酔で取り除く方法です。

【方法(硬膜外麻酔)】

本人の希望と医師の判断を加味した適切なタイミングで、腰部の硬膜外腔にカテーテルを4〜6cm挿入します。カテーテルより麻酔を注入し、以後麻酔がきれてきたら適宜追加投与していくことで疼痛コントロールを行います。

【メリット】

  • 疲労が少なく、産後の回復が早い。
  • 過度の緊張や不安が取り除かれる。
  • 心臓や肺への負担が減る(心疾患や肺疾患の症状悪化を防ぐ)。
  • 自己免疫疾患の悪化を防ぐ。
  • 精神病の再発・悪化の予防。
  • 高血圧の人が使用すると血圧が下がり、赤ちゃんへの酸素供給量が増える。
  • 産後の処置(縫合や精査)の痛みも和らぐ。

【デメリット】

  • 母体の血圧が下がることで、赤ちゃんが一時的に徐脈になりやすい。
  • 下肢の感覚がわからなくなり、転倒しやすくなる。また長時間の同一体勢による合併症(神経障害)のリスク。
  • 硬膜外腔以外に迷入されるリスク(脊髄くも膜下腔や血管内)。
  • 麻酔投与中は尿意を感じず、ご自分の力で排尿することが困難なため、適宜カテーテルを用いた導尿が必要となる。
  • 麻酔によって筋力も低下し、お産の時間が長引く。
  • 陣痛が弱まり、回旋異常となりやすい。
  • いきむ力が弱いため、吸引分娩や鉗子分娩の確率が上がる。
  • 産後、頭痛が続く場合がある。
  • カテーテル挿入による感染のリスク。

以上が、無痛分娩のメリットとデメリットです。


どのように産むか、ご自分で選ぶことができる時代となりました。
様々な選択肢がある中で、妊婦さんが満足のいく出産ができるように、妊娠中から情報収集をしておきましょう。

無痛・和痛分娩を選択肢にいれている人は、病院主催の無痛分娩講座を受講することをおすすめしています。そして麻酔使用時には必ず「同意書」が必要となります。
メリットとデメリットをふまえ、納得したうえで決断できると良いですね。
特に心疾患や肺疾患、自己免疫疾患や精神疾患等を合併している妊婦さんの場合は、症状の悪化を防ぐためにも、専門医との連携が必須です。

安全で安心な分娩を実施するためには、妊婦さん・ご家族と医療者のコミュニケーションが欠かせません。
「この症状は正常なのか、異常なのか。」という妊婦さんの主訴が、医療者にとっては重要な気付きにつながります。
是非、一緒に勉強していきましょう。

無痛分娩に関する詳しい情報を得たい方は、日本産科麻酔学会(JSOAP)の学会ホームページを参照してください。


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