島の出産事情(医療のない地域での出産)


私は20代前半の頃から全国各地の離島めぐりにはまっており、年に2〜3回は島に数日間滞在しています。
今回は瀬戸内海に浮かぶ小豆島と直島にやってきました。

島に行く度に気になるのは、各島の出産事情です。人口の少ない島にはお産を取り扱う施設がない場合が多く、島人はわざわざ本島に船で移動する必要があります。

陣痛が始まってから赤ちゃんが生まれるまでの時間は、初産で平均11〜15時間経産婦で平均6〜8時間です。
人によっては陣痛開始後1時間で生まれる場合もあるため、船で移動していると間に合わない可能性もあります。


そのため妊娠後期になったらわざわざ本島の病院近くにマンションをかりて生活する人もいます。

また予定日付近で入院して、誘発分娩(人工的に子宮口をひろげて陣痛をおこす点滴)をする人も増えています。

しかし働いてる妊婦さんや、上の子の育児中である経産婦さんの場合は、なかなか島から出ることが難しい現状です。
また海が荒れて船が欠航してしまった場合は、島から出ることすらできない状況となります。

実際に離島で暮らす女性に聞いてみると『わたしは道路で産んだ』『間に合わなかったから、自宅で産んだ』という人もいました。
医療者のいない状況でも、安産で母子共に正常な経過であれば結果として良いのですが、万が一『出血多量』や『赤ちゃんの蘇生が必要な状況』となった場合には、一刻も早い医療の介入が必要です。


そのような時に島人にとって頼みの綱となるのが、ドクターヘリです。

本来救える命を、移動距離や搬送時間が原因で失わないためにも、2007年には『ドクターヘリ特別措置法』が制定されました。それに伴いドクターヘリの導入数も少しずつ増えてきており、今後の更なる活躍が期待されています。

沖縄本島北部の離島や遠隔地を中心に民間救急ヘリを運航するMESHサポートというNPO法人があります。
実際にこのヘリシステムで『助からなかった命が助かった』事例があります。

離島に住む妊婦さんが安心して妊娠・出産に臨むためには、過疎地域の効果的な救急医療体制の確保が求められています。


離島・僻地医療は、ただ単純に医療施設や医療者を増やせばいいという問題ではありません。現状の医療費や人件費の状況を加味すると容易なことではないからです。

運航体制の見直しや離着陸場所の確保、そして救命救急に携わる医療者の育成と財源の確保が、今後の課題となっています。


赤ちゃんは、自分がどこで生まれるか選ぶことができません。地域間医療格差が今後ますます広がっていかないことを切に願っております。

港助産院  城野

東京マタニティスクール