【メンタル①】イライラの原因と怒っている相手への対応


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先日、仕事の一環としてアンガーマネジメント研修を受けたので、本日は産後に抱きやすい「怒りの感情」に焦点をあてていきたいと思います。
(以下、産後の女性だけではなく、子どもや恋人関係においてもあてはまる内容です。)



以前、産院に勤めていた時に、退院した方のご主人から電話がかかってきたことがありました。

「そちらで出産した家内が退院後に人格が変わりました。出産前は一度も怒ったことがなかったのに、産後は毎日ヒステリーをおこしており心配です。病院で何かありましたか?」

この電話には産後の夫婦関係あるあるが濃縮されています。
まずこのご夫婦の間におきていると思われる問題点を自分なりにあげてみます。

1. ご主人:奥様の怒りの行動にしか着目していない
2. ご主人:産後の女性の心身の変化を理解できていない
3. 奥様 :怒りの元になっている感情を伝えられていない
4. 奥様 :怒りの頻度・強度が高く、攻撃性がある
5. 夫婦 :コミュニケーションがとれていない

上記4点の問題点をそれぞれ紐解きながら、解決策を考えていきたいと思います。

1.  相手の怒りの行動(二次感情)にしか着目していない

怒りの感情はよく「瞬間湯沸かし器」に喩えられており、条件反射のように爆発しがちです。
そして負の感情やストレスは周囲の人へ伝わり「感染」していきます。
これをセカンドハンドストレスといいますが、受話器越しのご主人も奥様のストレスが伝染して苛立っているようでした。
何故ならご主人は奥様の「ヒステリー」という表面的な行動にしか着目できていなかったからです。
怒りという感情は氷山の一角(二次感情)であり、その怒りの裏には様々な感情(一次感情)が隠れています。

「なんで〜してくれないの!」「〜できないの!」という怒りの根本には、以下のような感情があるはずです。

不安・苦しい・嫌だ・辛い・虚しい・心配・寂しい・悲しい・罪悪感・焦り・後悔・疲労 等

そしてそれらは理想と現実とのギャップによってストレスとなり、怒りという行動に表れます。
ですから相手のイライラをイライラで返すのではなく、隠れている一次感情に注目することで根本的な解決の糸口がみつかる可能性があります。

まずは相手の怒りが生じるまでの過程を振り返り、相手の感情を特定する作業を行うのが良いと思います。
その際、自分の感情や価値観は一旦引き出しにしまって引き離し、相手目線で複眼的に考えていく必要があります。
女性は「言わなくても分かるだろう」「察して欲しい(空気を読んで)」と思いがちで、特に感情的な時ほど重要な事を言葉に出さずに「分かってほしい」と期待している事が多いです。

その核心に迫るためには、「傾聴と共感」が会話スキルでは必要になってきます。
育児中の不安やストレスに対して、ついつい問題解決法や正論を提案しがちの男性が多いですが、そこはぐっと我慢してください。
寝不足や心身ともに疲れている時に、冷静に議論できる余裕のある母親はいません。
そのような時に「〜べきだ論」を一方的に投げかけられると、「この人は私のことを分かってくれていない」と変換される可能性があります。

まずは相手を理解するためにも、相手が溜め込んでいる感情を表出させてあげましょう。
話し手である本人が感情の裏に隠れた気持ちに気づいていない場合もあるので、聞き役に徹してください。
そして相手の発せられた言葉に対して、更にふみこんだ質問を投げかけて傾聴し続けます。
この時、議論好きやせっかちの人はついつい自分の意見を言いたくなると思いますが、アドバイスやジャッジのタイミングを間違えると相手の心は閉ざされてしまいます。
「でもね」「だけど」といった類の否定語をよく使う人は、そもそも傾聴力と質問力が低いので、奥様のヒステリーは悪化の一途をたどります。

そのような事態を防ぐためにも・・・

(1)まずは相手の言動を受け入れたうえで肯定的なフィードバックをする。
→話し手が気持ちよくなり感情表出しやすくなる
(2)そして適宜質問をしつつ、返答内容を共感的態度で受け止める。
→共感してくれる相手に対して心を開く
(3)結果、話し手のストレス軽減や新たな気づきにつながる。
→問題解決の糸口を共に見出していく

2.  相手の状態理解ができていない(産褥期に関する知識不足)

共感的態度で受け止めるのは容易いことではありません。
そもそも超能力者ではないので、他人の気持ちを100%理解・共感することは不可能です。
人は理解しあえない故に、共感疲労で自身が疲弊してしまっては元も子もありません。

奥様は苦しみを感じて欲しいのではなく、ただ寄り添って欲しいだけなのです。
産後の母親が夫に対して求めていることは、表面的な共感ではなく思いやりであることが多いです。
思いやりとは、苦しみを感じることではなく、理解しようと向き合うことです。
他者理解の為には相手の立場に立つことが前提になるので、産後の女性の心身の変化を解剖学的・心理学的に理解すると良いと思います。

何故、産後クライシスになるのか。
何故、産後の女性は夫を拒むのか。
何故、産後の女性の情緒が不安定になりやすいのか。等

産褥期に関する知識が不足していると、電話越しのご主人のように奥様の豹変ぶりに困惑してしまうでしょう。
普段だったら怒らないようなことでも、産後の余裕がない時やホルモンバランスが不安定な時には敏感に反応してしまいます。
相手の怒りの沸点がいつもより低くなっている時は、「助けて欲しい」というサインが隠れている可能性が高いです。
特に産後は寝不足や疲れ等で余裕がない状態であることに加え、子育ては思い通りにいかないことの連続です。
そしてそんなイライラしている自分に対し、自責の念を抱いて落ち込んでいる母親も少なくありません。

3.  怒りの一次感情に目を向ける

女性の怒りの感情はポイントカードに似ています。
夫や恋人に対する不満ポイントが蓄積していった結果、ある日突然爆発します。
女性がいきなり一発レッドをだしてきた日は、たまった不満ポイントのキャッシュバックの日なのです。
その不満ポイントは、相手への期待があるからこそたまっていきます。
そしてその期待が裏切られてネガティブな感情を抱いた時、「悟って欲しい」「言わなくても分かるよね?」「〜あるべき」等の欲求を相手に求めてしまうのです。
しかし察して欲しい願望を汲み取れるご主人は少ないので、奥様の不満ポイントはたまる一方です。

心理学者のアドラーは、怒りの感情は「相手に対する支配」といっています。
発生した出来事や相手の言動について自分自信の意味づけを行ったうえで、それが許せない・受け入れられないと認識した結果、怒りが発生します。
相手が自分の望むような人ではないと感じる、という事実の受容をしたくないからこそ相手を責めてしまうのですね。
つまり怒りの感情を生み出しているのは、実は自分自身(価値観や考え方)なのです。

ですからまずは相手や自分が何に対して怒っているのかを客観的に振り返り、怒りのトリガーに注目してみましょう。

・触れられたくない部分なのか
・コンプレックスを触発されたからか
・過去のトラウマ 等

「なんで〜してくれないの?」「〜してよ!」という相手の言葉の裏には、「私はこう感じている」という感情(内なる意味づけ)が隠れているので、そこに気づかない限り問題は解決しません。

見て見ぬふりや無視をするのではなく、気付こうとする姿勢(関心)、つまり言葉によるコミュニケーションを大切にしないと夫婦間の溝は深まるばかりです。

また奥様側も伝え方が悪いと、相手に気づいてもらえません。
相手にうまく伝わらないと受け手が悪いと思いがちですが、伝え方が曖昧だったり分かりにくかったりしている可能性があります。
ですから「同じことを何度も言っているのに伝わっていない」と感じた時は、自分の伝え方を客観的に振り返り、伝え方を変えていく必要があります。
相手にどうしてほしいのかを、相手の性格や理解力に合わせて具体的かつ明確な的を出せばコミュニケーションのズレが生じにくくなると思います。
これは私自身も苦手とするところなので課題です・・(>_<;)

私たちを怒らせるものの正体は、理想と現実との間に生じる「ギャップ」です。
現実(生じた出来事)を変えたり相手をコントロールしたりすることは不可能ですが、自身の思考や行動をコントロールすることで怒りの連鎖を断ち切ることはできます。

具体的な怒りのコントロール方法については、次のブログにまとめます。
産後、パートナーや子どもに対してイライラしやすい人は参考にしてください。

▶︎【メンタル②】怒りを客観視して感情の癖を知る
▶︎【メンタル③】怒りのコンロール方法と伝え方

港助産院 城野
http://www.minato-josan.jp


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