【地震】震災時、赤ちゃん(新生児・乳幼児)はどうなる?
東京都では、今後30年の間に震度6以上の大地震(首都圏直下地震)に見舞われる確率が70%といわれています。
今お腹の中にいる胎児、そして生まれたばかりの赤ちゃんは、これから先の人生でほぼ確実に大地震を体験することでしょう。
それは、たった今でもおかしくありません。
仮に、1分後に大きな地震がきたとします。
その時、あなたはどうしますか?
まだ歩くことができない赤ちゃんをどうしますか?
震災時の育児用品は何が必要で、赤ちゃんをどこに避難させますか?
おそらく大半の人がパニック状態となり、迅速な行動をとることが困難な状況に陥ると思います。
2011年3月11日の東日本大震災でも、被災地の多くの赤ちゃんに様々なトラブルが生じました。
そこで本日は、東日本大震災で生じた赤ちゃんのトラブルや育児困難に陥った事例を振り返り、いざという時の準備・対処法について考えていきます。
①低体温
赤ちゃんは自分で体温調節ができないので、外気温の影響を受けやすいです。低体温状態が持続することで代謝・酸素量が消費されるため、体力の消耗や活気の低下、痙攣などをおこす可能性があります。
↓震災時の対策
- 大人の衣類やタオルで包み込み、冷気を遮断する。
- 風に直接あたらないよう、風向きに気をつけて、窓や壁から離す。
- 汗をこまめに拭き取り、体の熱がうばわれるのを防ぐ。
②母乳分泌量の低下
極度の緊張やストレス状態が持続することにより、母乳分泌を促すオキシトシンというホルモンの分泌が低下します。そのことにより一時的に母乳分泌量が減少してしまう場合があります。あくまでも一過性です。
↓震災時の対策
- 直接授乳を通常通り継続し、母乳を極力中断しない。
- 少しでも落ち着いて授乳できるよう授乳場所の確保。
- 母乳減少は一時的なことなので、焦らなくて大丈夫。
- 頻回授乳を継続することで母乳分泌が復旧してくる。
- 乳汁分泌が良好で感染症のない授乳婦からの貰い乳(両者の理解・同意が必要)。
③ミルクの調乳ができない
ミルクを調乳する際には、清潔な水を70度以上にあたためる必要があります。しかしインフラが整っていない被災地では、清潔な水を確保することはおろか、加温・加熱するための燃料源が不足しています。
そのため東日本大震災でも正しくミルクを調乳できなかったことで、体調を崩したり感染症を患ったりした赤ちゃんが沢山いました。
このような時に重宝されたのが、海外メーカーの液体ミルクです。
液体ミルクは常温保存が可能で、水の準備や加熱の必要性がありません。開封すればそのまま与えることができるので、持ち運びも便利で簡易です。
東日本大震災の時も、一部地域には沢山の液体ミルクが海外から届けられました。尚、日本国内での液体ミルクの販売は認定されていないので、購入時は海外から取り寄せる必要があります)。
↓震災時の対策
- 冷水での調乳は細菌感染の可能性も否定できないので控える。
- 哺乳瓶がなくても、紙コップやスプーンで与えることができる。(カップを使った授乳方法の詳細:http://jalc-net.jp/hisai/cupfeeding2005.pdf)
- 使い捨て哺乳瓶や調乳済み液体ミルクの物資調達と活用
- 災害時の乳児栄養についての詳細:http://www.jnanet.gr.jp/kan/infantnutrition20110320-1.pdf(新生児医療学会)
- 災害時の乳児栄養とカップ授乳についての詳細:http://www.jnanet.gr.jp/kan/infantnutrition20110320-2.pdf(新生児医療学会)
④紙おむつの不足
小売店の生活必需品はすぐに売り切れてしまいました。
赤ちゃんは1日に10回以上も排泄をしますが、おしりふきとおむつが足りないので、頻繁に交換することができませんでした。
そこでレジ袋やタオルを布おむつのように使用して、再利用をしていました。
↓震災時の対策
- 布おむつの活用
- 衣類やタオルで代用
- 簡易おむつを作成(作成方法:http://yamagata-mekke.awe.jp/?p=770)
⑤衛生面
毎日入浴を行うのが望ましい新生児ですが、避難中は数日間入浴できない状況となります。そのため、湿疹や皮膚トラブルが出現・増強した赤ちゃんが沢山いました。
被災地での入浴・沐浴は困難ですが、ボランティアの人たちの協力によってドラム缶で沸かしたお風呂が用意された地域もありました(詳細:https://youtu.be/9pvqZ5EROaA)
被災地での入浴・沐浴は困難ですが、ボランティアの人たちの協力によってドラム缶で沸かしたお風呂が用意された地域もありました(詳細:https://youtu.be/9pvqZ5EROaA)
↓震災時の対策
- ガーゼやタオルで清拭をして皮膚の清潔を保つように工夫する。
大震災が起きると、電気、ガス、水道、通信網などのライフラインが断絶します。また小売店の生活必需品も直ぐに売り切れてしまいます。
よって災害に備えて、1週間分の食料や飲料水、育児用品の確保をしておくことが望ましいです。
具体的な災害時の避難グッズについては、次回お伝えします。
港助産院 城野