被災地での母乳育児の問題点(粉ミルク・液体ミルク)

2019年3月11日

東日本大震災の発生から8年の時が経ちました。
小さなお子さまと共に避難所生活を余儀なくされた方も沢山いらっしゃいました。
当時のニュースでは「粉ミルクが足りない」と報道されていましたが、そもそもライフラインの断絶による水の確保が難しい状況下、粉ミルクの調乳そのものが困難でした。
不適切な粉ミルクの調乳は、感染リスクにもなり得ます。

あれから8年目・・・。
多くの方の署名活動やミルクメーカーの改良・開発の積み重ねにより、
本日3月11日、日本で初めて液体ミルクが販売開始されました。

アイクレオ赤ちゃんミルク(江崎グリコ)」は、加水したりお湯をあたためたりする必要がないので、そのまま赤ちゃんに与えることができます。
賞味期限は6ヶ月で、常温保存・飲用が可能です。
値段は、従来の粉ミルクの2〜3倍と高めですが、欧米ではその手軽さや便利さから広く流通しています。
日本でも今後は段階的に広がっていくことが予測されます。

粉ミルクとの違いや成分、注意事項等は・・・
消費者庁▶︎「乳児用液体ミルクって何?」を参考にしてください。


また東日本大震災や熊本地震時に生じた母乳育児や粉ミルクの問題点を以下に記します。

1. 精神的ストレスで母乳が一時的にでにくくなる

▶︎ホルモン(オキシトシン)の影響なので一過性の場合が多いです。でなくても吸わせ続けていれば、母乳は再開します。
でなくなったからといって授乳をやめてしまったら、乳汁分泌抑制因子が生成されて母乳がつくられなくなります(断乳の状態)。
一時的にでていなくても、焦らずに落ち着いて授乳を続けてください。
1回量が減っていても、授乳回数を増やすことで1日の総量が増えます。

2. プライバシーが確保された授乳環境がない

▶︎避難所に授乳場所がない際には、大きめのタオル・スカーフや衣類等を首や肩に巻いて代用してください。

3. 哺乳瓶を受け付けない子もいる

▶︎寝ぼけている時(睡眠酩酊時)に与えると飲んでくれる場合があります。
また紙コップや茶碗、スプーン等で代用してみてください。飲ませるのにはコツが必要ですが、少量ずつで大丈夫です。
早くて生後3ヶ月以降であれば、スパウトやストロー等で飲んでくれる子もいます。

4. 粉ミルクを調乳する清潔な水がない

▶︎日本の粉ミルクは、硬水ではなく軟水(水道水)を用いて調乳するようにつくられています。
ミネラルウォーターにはミネラル(Ca,Mg等)が多く含まれているため、ミネラルの過剰摂取により胃腸に負担がかかります。

5. 粉ミルクに使用する水を70℃以上にあたためられない

▶︎サカザキ菌やサルモネラ菌の繁殖を防ぐために、70℃以上(80℃前後)のお湯での調乳が望ましいとされています(WHO)。
また冷たいミルクを嫌がって飲んでくれないお子様もいます。

6.哺乳瓶がない

▶︎使い捨て紙コップや茶碗、スプーン等で代用できます。


いつ、なにが起こるか分かりません。
自然災害に対してどのような対策をとれば良いのかイメージや準備をしておくことは、小さなお子さまを守ることにも繋がります。

災害の危険から多くの人々が守られることを心より願っております。

港助産院 城野
http://www.minato-josan.jp

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