玉眞院の暗闇を歩いて感じたこと
本日3月11日は、二子玉川駅から徒歩10分に位置する「玉川大師」を訪れました。
玉川大師玉眞院の地下5mには、長さ100mの地下仏殿があります。
ここの地下霊場でお参りをすると、四国八十八ケ所、西国三十三ヶ所を巡るのと同じご利益があるとされています。
昭和9年、当時の住職が「四国88ヶ所のお参りを1ヶ所で参拝できるようにしたい」という思いからつくられたのが始まりです。
300体もの仏像がある地下仏殿は、仏(大日如来)の胎内を表しているそうです。
「胎内」といえば、胎内巡りで有名な長野の善光寺がありますが、善光寺よりも長い参道を有しています。
↑善光寺のお戒壇めぐり
さて地下にもぐると、そこは漆黒の闇。
目の前が何も見えないため、右手で壁をさわりながら手探りで前にすすみます。
まさに、一寸先は闇。
参道は決して直進ではなく、右に左に曲がりくねっていて所々狭くなっておりました。下り坂になっている場所もあり、心拍数があがりました。
(パニック障がいや閉所恐怖症の人は無理しないことをおすすめします)
暗闇で恐怖心が高まると共に、5年前の震災後の停電のことを思い出しました。
震災で街から全ての明かりが消え、多くの人が漆黒の闇の中での生活が余儀なくなれました。
一寸先は闇という厳然たる事実を目の当たりにし、多くの人が大切な人や被災地を思って祈りました。
5年前の今日、亡くなる命もあれば生まれる命もありました。
当時、私は病院にいなかったのですが、何人かの友人(助産師・産科医)は出産に立ち会っていました。
当時のことを振り返った助産師が、「地震で揺れ動く院内はパニック状態だったが、お腹の子だけは何としてでも守りたかった。」と言っていたのが印象的でした。
話は戻りますが、玉川大師の真っ暗闇の地下霊場を参拝しながら、ふと「胎内」のことを考えていました。
地下霊場は、大日如来の胎内を表していると前述しましたが、そもそも母親の胎内も同じように真っ暗です。
胎児が母親の子宮内(胎内)にいる間、胎児は一切の光が遮断されている羊水の中で10ヶ月間過ごします。
暗くて静かでストレスフリーの状況の中、急に陣痛が始まり子宮が収縮し始めると、赤ちゃんはさぞ驚くだろうなぁと・・思いながら参拝していました。
陣痛がくるたびに、胎児は全方面から圧迫されて酸欠状態になります。そして最終的には、狭い骨盤の中をくるくる回転しながら出口に向かう必要があります。
※詳細は「赤ちゃんが生まれてくる時」をごらんください。
人は生まれる時、帝王切開も含めて全ての人間がこの「漆黒の闇」を体験してきます。
そして暗闇からでてきた赤ん坊は、外の光に対して眩しそうに反応します。
その後、室内を薄暗くしてしばらく様子をみていると、赤ん坊はうっすら目を開け始めて自ら母親の乳房に吸い付き始めます。
この光景をみる度に「やっと光になれてきたんだねー」なんて思っていたのですが、地下霊場から地上にでた際の私もまさにそのような状況でした。
明順応の為にしばらくぼーっとしていたのですが、次第に明るさに慣れて、普段通りの光景が目前に広がっていることに安堵しました。
当たり前の光景が当たり前でなくなる日は唐突に訪れるのだということを改めて痛感した日でした。
5年前、一緒にキャンプをした宮城県・福島県の子どもたち1人1人の笑顔が今もなお脳裏にやきついています。
未来を担う子どもたちが、安心できる環境で力強く健やかに育っていかれますよう祈っています。
そして関東在住の小さいお子様をもつ親御さんたちも、いつくるか分からない首都圏直下型地震に備えて準備を始めておきましょう。
・誕生死
2015年3月11日
東京マタニティスクール
港助産院 城野