【2020年新春】出産とフルマラソン



新年あけましておめでとうございます。
今年、初正月を迎えられたお子様たちもおめでとうございます。


年末に出産された方は、あまり正月感のない日々を過ごされているのではないでしょうか。
私も特に正月らしいことをしていないのですが、テレビをつけたら正月の風物詩として定着した箱根駅伝が放送されていました。
走っている選手たちの表情はとても苦しそうですが、人は何故走るのでしょうか。

私自身は走ることに対して全く興味がなく、むしろ苦手意識を抱いていました。
そんなフィジカルのない私でも・・人生で一度はフルマラソンに出場してみたいという好奇心だけはあったので、昨年初エントリー致しました。

走りながら出産と相通じるものを感じており、過酷な状況をのりきるためには何が大切なのかを改めて考えさせられたので・・以下にまとめます。

1.    練習
以前、産後ケアでお会いした方から「出産はぶっつけ本番ではできない。妊娠中からの準備が大切だと改めて感じた。」というお話を伺っていたので、その言葉を思い出しながら練習を始めました。
人が生まれてくる際には約40週という胎児成熟期間が必要ですが、フルマラソンも同様に練習期間なくして走れません。
(ランニングとは無縁の生活をおくっていた私が練習を始めたのは、本番の2ヶ月前・・。我ながら遅すぎです。)

2.    イメトレ
「出産のイメージトレーニングとして、産前は動物の出産シーンをずっと見ていた。」という方がいました。
またその方は「出産に対するネガティブなイメージが強いと不安感が増すので、陣痛をポジティブに捉えられるように出産のメンタルリハーサルを繰り返していた」そうです。
私も、フルマラソン完走後の自分の姿をイメージしながら日々の練習にとりくみました。実際は5kmで息切れしていましたが・・。

3.    サポーター
出産や子育てを独りで臨む場合は、負担が大きくて大変です。
ご家族や医療者、社会保障制度や民間事業のサポート等が産前産後の負担軽減を図っています。
初体験のフルマラソンも、練習不足の私にとっては大きな負担になることが容易に想像できました。
独り参加だったら出場を辞退していたと思いますが、友人と口約束をした手前、有言実行せざるを得ない状況になりました。
一緒にフルマラソンに参加する友人とは練習結果報告をし合っていたのですが、いつしか友人はやる気のない私のマネジメント係になっていました。
友人は元コンサルだったので、目標から逆算した計画を数値化して詰めてくれました。
また当日は3人のランナー仲間がいたので、彼らの存在が心強かったです。
そして何よりも沿道で応援してくれていた人たちの声援が、走るエネルギーになりました。
出産時にも「医療者や立会者の声かけ」はとても重要です。困難な状況の時こそモチベーションがあがる言葉は心に沁みます。

4.    準備
産後には育児用品が必要になってきます。何も準備をしていないと、「退院時に赤ちゃんに着せる服がない(裸で退院?)」ということになりかねません。
フルマラソンも自分にあった靴やウェア等の事前準備が必要です。

5.    当日のモチベーション
陣痛の痛みは、恐怖心や不安感が強いほど痛く感じます。
マイナス思考やネガティブなイメージにとらわれると、負の感情が増幅されていきがちですよね・・。分かります。
フルマラソン中も、自身のメンタルが負のスパイラルに陥る可能性を懸念していました。
そこでフィジカルがない分、せめてポジティブシンキングで走ろうと決めていました。
「まだ10km」→「もう10km
「あと5kmもある」→「あと5kmしか走れない」
「辛い」→「逆に楽しい」
「電源切れて音楽とまった」→「自然音のが良い」
「完走できるかな」→「大丈夫、できる」
・・若干、無理やり感がありますが、単純脳ゆえにプラシーボ効果は絶大でした。
負の感情が湧いてきた瞬間に思考転換をし続けなかったら、完走は不可能でした。

6.    栄養補給
出産は体力を消耗します。また子宮筋の収縮(陣痛)にはエネルギーが必要です。分娩進行に伴い飲食が困難になってくるため、脱水傾向にもなりがちです。
故に分娩時には、食べられるうちに栄養補給をしつつ、水分摂取を適宜行うことが大切です。
フルマラソンも同様に、計画的に補給食を摂取しないと、後半でハンガーノック状態に陥る可能性があります。
分娩時やフルマラソン時には、こまめな糖質補給が必要です。

7.    呼吸
痛くて辛い時は「息を止めがち」で浅速呼吸になりがちですが、分娩時の母親の呼吸はへその緒を介して赤ちゃんと繋がっています。
浅くて速い呼吸だと赤ちゃんへの酸素供給量が減るため、赤ちゃんは徐脈(酸欠状態)になります。
辛い時こそ「息を吐きだす」ことに集中してみてください。
意識的に息を長めに吐くことで迷走神経が刺激され、副交感神経が優位になります(リラックス)。
呼吸法も色々ありますが、簡単にできる呼吸法としては「ため息」がおすすめです。
私もフルマラソン中に呼吸が苦しくなってきた時には、息抜き(ふーっと軽く息を吐く)をしてリセットしていました。

8.    マイペース
周りのランナーのスピードに左右されないよう、マイペースを意識しました。
他人の目や追い越し等は気にせず、心地よく走りきれるペースを維持しました。
お産の経過も十人十色であるように、分娩所要時間は個人差があります。
先が見えない分娩経過に苛立ちや不安感を抱きやすいですが、何かしらの理由があって停滞しているはずなので、焦らずに、できる範囲内のことをしていれば十分だと思います。

9.    感謝
紆余曲折ありましたが、目標タイムで完走することができました。
マラソン前日や当日のフィニッシュ後にメッセージをくれた方の存在も心強かったです。ありがとうございました。

まだまだ小さな歩みで歩幅の狭い私ではございますが、2020年も前に向かって走り続けていきたいと思います。
そしてより多くの方たちの産前産後に携われますよう、当院の活動範囲(距離)もひろげていく所存です。
お一人ひとりの目標に向かって伴走していきますので、本年も宜しくお願い致します。



港助産院
http://www.minato-josan.jp


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