妊婦さんが睡眠障害(不眠・中途覚醒・浅い眠り)になる原因と対策

多くの妊婦さんが「夜あまり眠れなくなった。」「眠りが浅くて夜中に目を覚ましてしまう。」という悩みをかかえています。
これは妊娠期に増加するエストロゲンとプロゲステロンというホルモンが関係しています。

妊婦の睡眠障害に影響を及ぼすホルモン


エストロゲン:REM睡眠が減少(眠りが浅くなる)
プロゲステロン:non-REM睡眠が増加(日中も眠くなる)
コルチゾール:REM睡眠が減少

※REM睡眠:浅い眠り non-REM睡眠:脳の眠り

これらのホルモンが相互に影響しあい、妊娠末期の睡眠障害の要因になっていると考えられています。
また妊娠中に高値を保つプロラクチンの影響でnon-REM睡眠が増加して、妊娠中に昼間も眠くなる過眠傾向の妊婦もいます。

また妊娠中は、妊娠・分娩への不安、ボディイメージの変化に対する不適応などで不安を抱く人が多く、その影響でプロゲステロンが増加して入眠困難になりやすい人もいます。
さらに、頻尿や腰背部痛、こむら返りや頻回の胎動などの身体的な変化も睡眠に影響を及ぼしています。
睡眠障害による不規則な生活は体内時計の働きを乱し、睡眠状態を悪化させるだけでなく、精神状態にも影響を及ぼします。
そのため夜間は十分な休息(7〜8時間)をとることが望ましく、それでも疲労や傾眠傾向がある場合は昼間に休息を適度にとると良いでしょう。

睡眠障害(不眠・入眠困難)の対応


日中の工夫


・日中は活動的に過ごし、午後〜夕方には軽い運動をする。
・一定のリズミカルな運動(歩行)がセロトニン分泌に有効。
・食事時間と起床時間を一定にする。
・昼寝にもメリハリをつける。
・昼寝は15時までにして寝過ぎない。
・日中に太陽の光をあびて、夜は室内を暗くする。

リラックス


・不安の原因を取り除く(パートナーとのコミュニケーションを大切にする)。
呼吸法(体を弛緩させて目を閉じ、吸うことよりも吐くことに集中する。5〜7秒間で口から息を吐く。深いため息をつくようなイメージで呼気と一緒に体の力を抜き、全身の筋肉をゆるめる。)
筋弛緩法(手足を伸ばして力をぬく。両手と足のつま先に力をいれて強い力でギュッと5秒間にぎる。その後力をぬいて脱力する作業を繰り返す。)
・不眠のツボを指圧(足のかかとの真ん中にある失眠。頭の頂上で左右の耳の上を結んだ線の中央にある百会。)
・入浴時の入浴剤の活用(妊娠中は控えたほうが良いアロマに注意)
・アロマオイルをティッシュに2〜3滴たらして枕元におく(カモミール、マンダリン、ローマン、ネロリなど)

眠前の工夫


・就寝前にカフェインの多い物(コーヒー・緑茶など)は飲まない。
・眠前に刺激の強い本やテレビを見ない。
・テレビやケータイの液晶画面をみない。
・眠前の高温入浴は控える(38〜40度のぬるま湯)。
・あたたかい飲み物や下肢の保温で体をあたためる(冷刺激は交感神経を刺激する)。
・疲れない程度のストレッチ(夜間に足がつるのを予防)。
・深呼吸(副交感神経を優位にする)。

環境の工夫


・香り(妊娠中に使用可能な鎮痛効果のあるアロマの活用)
・音楽(自分の好きなリラックスできる音楽。自律神経を整える音楽がおすすめ。)
・寝具の工夫(枕の高さ調整)
・シムス位(仰向けに寝転がり、片膝をたてて、その足が上に来るように横向きに寝る。)
・補助枕の活用。。


眠剤の活用


妊娠中に睡眠剤を使用する際は、自己判断で内服せず、必ず医師と相談してください。(特に妊娠初期)。胎児への影響が100%ないとは断言できません。

おすすめのポーズ


私はヨガが好きで定期的に通っているのですが、ヨガには必ず休憩時間があります。
シャヴァ・アーサナ」といって、大の字に仰向けに寝転んだ状態で、全身の筋肉の力をぬく時間のことです。



別名「しかばねのポーズ」とも呼ばれていますが、手のひらを天井に向けてゆったりとした呼吸を繰り返します。
極上のリラックスポーズともいわれていますが、これが意外と難しいのです。
人は必ずどこかに力がはいっているからです。手足の力をゆるめても、無意識に眉間や唇には力がはいっている場合があります。
だからこそ意識して全ての筋肉を弛緩させて脱力します。

ヨガの教室では、このシャヴァ・アーサナの時間に「何も考えずに」「嫌なことやストレスも今の時間だけは全て忘れて」と言われますが、頭の中を空っぽ(瞑想状態)にするのは容易ではありません。
そのような時は、自分の呼吸に集中して、自分の身体が重力の影響で地下に沈んでいくような感覚をイメージすると良いでしょう。



夜間に十分な睡眠が確保できなかったら?


夜間に十分な休息がとれずに日中に眠気を催したら、昼間に仮眠をとっても大丈夫です。
午前と午後に1回30分程度の休息をとりましょう。
目を閉じてしばらく横になるか、横になれない場合でもできるだけ足を水平にして座り、ゆっくり呼吸をするだけでも疲労改善効果があります。

どうしても眠れない時は、無理に寝ようとしなくても大丈夫です。
妊婦さんが不眠症でも、お腹の中の赤ちゃんは関係なく眠っています。
赤ちゃんは、母親の睡眠リズムとは関係なく30分前後で寝たり起きたりを繰り返しています。なので「自分が寝ないと赤ちゃんに申し訳ない」と思い込まずに、「そのうち自然に眠くなる。眠れない時もある。」と肩の力を抜きましょう。
妊娠中の睡眠障害は一過性です。ホルモンは赤ちゃんの成長のために必要だからこそ変動するのです。
眠れなかったらどうしようと不安になったら、「眠れなくても大丈夫。生命に関わる大きな問題ではない。」「横になって筋肉の力をゆるめるだけでも身体は休まる。」と思いましょう。
心配しすぎないでくださいね。




夜間のこむら返り(足がつること)で中途覚醒してしまう人は、前記事「なぜ妊婦さんの足はつりやすいのか?」を参考にしてください。

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