イタリアの出産事情
前回に引き続き、本日のテーマもイタリアです。
イタリアといえば何を思い浮かべますか。
パスタ・ピザ・オリーブ・エスプレッソ・サッカー・オペラ・ローマの休日・ダビンチの最後の晩餐・フェラーリ・マセラティ・ローマの遺跡・革製品・・・
私の場合、職業柄でしょうか「イタリアの子育て・出産事情」が気になってしまいます。
そこで本日は、イタリア・モデナ(Modena)在住の叔母から聞いた「イタリアの出産事情」についてご紹介します。
(叔母は現在Modenaの大学病院に勤務しており、以前分娩室でも働いたことがある為、色々教えてくれました。)
イタリアの出生率は?
叔母が勤めているイタリアの大学病院では、毎月250〜280人の赤ちゃん(Bambino)が生まれています。多いですね。
しかしイタリア全体では、少子化問題が深刻化しています。
イタリアの合計特殊出生率(1人の女性が一生の間に産むとされる子どもの数)は1.40人(2012年)で、日本の出生率1.41人(2012年)を下回っています。
出生数が例年減少し続けている要因は複合的ですが、婚姻率の低下、国外移住者の増加、失業者数の増加、教育費の問題、子育て支援不足が挙げられています。
このままでは労働力も減少し続け、国の財政は更に圧迫されるでしょう。
日本同様に今後の少子化対策が注目されています。
イタリアでの妊娠中の過ごし方について
妊娠中は月に1回妊婦健診に通い、妊娠週数に応じて必要な検査を行います。
また母親学級・父親学級が積極的に行われており、出産・子育てに関する多くの学びを得る機会が日本よりもあります。
日本の場合、妊娠中の健診は分娩施設に通いますが、イタリアでは妊婦健診の場所と分娩の場所が異なります。そのため、出産の時に立ち会う産科医とは初対面であることがほとんどです。
イタリアの分娩スタイルは?
無痛分娩が一般的なヨーロッパの中でも、イタリアは比較的無痛分娩の割合が低いです。しかしイタリアはヨーロッパの中で最も帝王切開率の高い国であり、地域によっては半数以上の妊婦さんが帝王切開をしています。
叔母が勤めている大学病院では、「産科医立会いの分娩室」と「助産師だけの分娩室(産科医立会いなし)」で部屋が分かれており、希望や健康状態に応じて割り当てられているそうです。
またパートナーや家族の立会い出産が一般的で、日本のような規制(人数・時間制限)はありません。
入院期間は?
日本:経腟分娩5日、帝王切開7〜10日
イタリア:経腟分娩2日、帝王切開5日前後
イタリアに限らず、海外では産後の入院期間が短い傾向にあります。
英王室のキャサリン妃が、出産した翌日に退院してテレビに映っていた姿が話題になりました。
日本も産後の入院期間は短縮傾向にありますが、産後のサポート不足が問題視されている現状ではなかなか難しいでしょう。
出産費用は?
イタリアの場合、出産費用・入院費用は保険が適応されているため、基本的には無料です。(プライベートドクターは有料)
更に第二子以降の出産時には出産祝い金が国から補助されます。
国籍は?
ヨーロッパの移民問題が懸念されていますが、イタリア国内でもアフリカからの移民が後を絶えません。
叔母が勤める病院も多民族で、アフリカ・アラブからの移民が50%を占めているそうです。
アジアからは断然フィリピンと中国人(華僑)が多く、イタリア本国人は30%だそうです。
国が違えば妊娠・出産・育児に対する価値観や文化も異なるため、医療者にはグローバルな対応が求められるのだろうな・・と助産師の視点で感じました。
その他
ローマ市内には、カトリック協会の中心地であるバチカン市国があります。
イタリア人の約9割がカトリック教徒であり、国内の至る所に歴史を紡いできた教会があります。病院内にも教会がある施設が多いのもイタリアの特徴の一つです。
また出産後、自宅の入り口にリボンを飾る慣わしがあります。
男の子は「青いリボン」、女の子は「ピンクのリボン」をドアにかけて、赤ちゃんが生まれたことを知らせます。
リボンという印によってMamma(母親)になったことを近隣に周知できるのは面白いですね。
以上がイタリアの出産事情です。
今回ご紹介したのはあくまでもイタリアの一例であり、文化やシステムの違いを記しただけです。
個人的には何が良くて何が悪いという考えは一切ありません。
日本で普通とされていることが、実は海外からしてみたら普通でない場合があります。
逆もまた然り。
「こうであらねばならない」という固定概念は、時に出産・子育ての壁となってしまいます。様々な方法や価値観があることを受け入れると、固まっている価値観がほぐれて少し肩の力が抜けるかもしれません。
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