小笠原諸島での妊娠・出産・子育て事情
以前、「島の出産事情(医療のない地域での出産)」というテーマで僻地医療について起稿しました。
本日も引き続き離島医療について考えていきたいと思います。
wikipediaによると、日本には本土を除くと6,847島の離島があります。
離島マニアの私でも、全ての島を制覇するのには長い道のりになりそうです・・。
さて、数ある日本の離島ですが・・私が今までに訪れた離島の中でも特に印象的だったのが「小笠原諸島」です。
片道25時間30分のその島は、日本に残された最後の楽園とも言われており、平成23年に世界遺産に登録されました。
交通手段は「フェリー」のみで、週に1〜2便しか出航していません。欠航する日も多いため、容易に訪れることができないまさに離島の中の離島です。
ボニンブルーと称されるコバルトブルー色の小笠原の海は、世界中のダイバーから愛されています。
↑私
そんな小笠原諸島で妊娠・出産・育児を経験した同僚がいたので、詳しく話を聞きました。
まず・・・
①妊婦健診は父島と母島にある診療所で受ける
ただし産婦人科医は常勤していません。必要時は年に数回内地から往診にくる産婦人科医の往診日に合わせてスケジュールを調整します。
②緊急時はドクターヘリで内地に行く
母子の健康が損なわれる危険性がある時は、一刻も早い治療が必要です。フェリーでは片道25時間30分も時間のロスをしてしまうため、緊急時にはドクターヘリが活用されます。
しかし小笠原諸島発のドクターヘリは硫黄島を経由・乗り継ぎするため、内地まで5〜8時間かかります。
③妊娠32週までに島をでる必要がありある
なぜなら小笠原諸島には出産できる施設がないうえに、唯一の交通手段である船の決まりで妊娠32週以降は乗船ができないからです。
ゆえに妊娠32週までに全ての妊婦さんは内地に移動する必要があるのです。里帰り出産が多いそうです。
④産後も1ヶ月健診が終わるまでは島に戻れない
基本的に1ヶ月健診は、出産した医療施設でフォローすることになっています。
小笠原に戻っても産婦人科医・小児科医・新生児科医が不在のため、必然的に内地での滞在期間は長くなります。
⑤産後の健診のタイミングが限られている
小児科医が島に往診にくるのが約2ヶ月に1回であるため、その日に合わせて子供の健診を行います。
以上が同僚からの情報の一部です。
産婦人科医不在の離島は小笠原諸島に限らず、全国に数多く存在しています。
離島の周産期医療が危機的状況にたたされている背景は複雑化しています。
離島に住む妊婦さんが安心して妊娠・出産・子育てができる為にはどうしたら良いのか、今も尚議論され続けています。
〜最後に〜
学生の頃、国際医学生連盟という医学生のNGO団体に少しだけ参加していたのですが、当時よく耳にしていた「地域医療のABC」をふと思い出したのでご紹介致します。
地域・離島医療のABC!
A: Act locally,think globally.
B: Balance
C: Communication & collaboration
港助産院 城野